フルリモートの受託開発会社が、要件定義前の「対面ヒアリング」を大切にする理由

フルリモートの受託開発会社が、要件定義前の「対面ヒアリング」を大切にする理由

パーティーハード株式会社は、受託開発やAIソリューションの提供をフルリモート体制で手がけるソフトウェア会社です。日々の打ち合わせやタスク管理にはオンラインツールを活用しており、移動時間を省いた効率的なやり取りを日常の業務基盤としています。地理的な制約を受けずに日本各地のエンジニアと開発チームを組める環境は、開発速度の向上に寄与してきました。

しかし、新しい事業の立ち上げや業務システムの刷新など、仕様が白紙に近い段階から相談を受ける場面では、オンライン会議特有のもどかしさに直面することがあります。画面越しの会話では、事前に用意されたアジェンダに沿って論点を順序立てて消化する進行になりがちだからです。その結果、発注側が抱えている漠然とした違和感や、言葉になっていない要求の背景を十分に拾い上げられないまま、表面的な合意に落ち着いてしまう懸念が生じます。

この懸念を避けるため、パーティーハード株式会社では、仕様決定前の曖昧な相談段階に限り、あえて対面でのヒアリングを選択しています。

オンライン会議と対面ヒアリングの特性の違い

オンライン会議が効果を発揮するのは、確認すべき論点や参照先があらかじめ定まっている対話です。画面共有を用いて動くプログラムやドキュメントを同時に確認するコードレビュー、事前に定めた議題に沿って進捗を確認する定例会では、移動の手間がないオンラインの形式が作業効率を高めます。発言者が一人ずつ順番に話し、チャット欄に補足情報を書き残す形式は、決定事項の記録にも適しています。

これに対して対面ヒアリングが得意とするのは、構造化されていない情報のやり取りです。人間は会話の最中、言葉だけでなく表情の変化、視線の動き、相槌の間合いといった多くの非言語情報を発信しています。発注担当者がシステムの仕様について語る際、どの機能の説明で口調に熱が入り、どの業務フローの説明で言い淀んだのかという反応は、画面越しよりも同じ空間を共有しているときのほうが明確に伝わります。

オンライン会議では沈黙や話題の逸脱が進行の停滞と受け取られやすく、参加者は無意識に議題の消化を急ぎがちになります。一方、対面空間では手元で資料を探す仕草や言い淀んだ間の空気がそのまま共有されるため、話の脱線や沈黙を許容しやすくなります。この余白があって初めて、担当者自身も言語化できていなかった現場の困りごとや業務の前提条件を拾い上げられます。

なぜブレストや初期相談では対面を重視するのか

受託開発における大きな損失は、開発が進んだ後に「本来作りたかったものと違う」と判明して発生する手戻りです。特に「何を作ればよいか確定していない」相談段階では、発注側が提示する初期の要望リストが、本当に解決したい事業課題とずれている例も珍しくありません。このズレを未然に防ぐ手段として、同じ空間でホワイトボードを囲みながら課題を整理する作業が役立ちます。

例えば、ある業務管理ツールの相談で、当初は「顧客への連絡履歴を残す入力フォームが欲しい」という要望を受けた案件がありました。オンライン会議の場では「入力項目は何にするか」という画面設計の話に進みかけていましたが、対面でのブレストに切り替えたことで、別の事実が見えてきました。

開発者がオフィスのホワイトボードに実際の業務フローを時系列で書き出し、担当者がどのタイミングで誰に連絡を取っているのかを一つずつ確認していくと、担当者が「実はこの連絡の前に、営業担当が紙のメモで指示を出してくる」と手元のペンを止めて呟きました。その瞬間、本当の滞りは入力フォームの不足ではなく、営業と事務のあいだの連絡が紙で分断されている点にあると、その場で突き止めました。同じボードの前に立ち、手書きで矢印を引き直しながら「本当に省きたいのはこの確認作業ですね」と視覚的に合意できたことで、余分な機能開発を避け、連絡通知を自動化する設計へ軌道修正できました。

パーティーハードにおける実践的なコミュニケーションの使い分け

対面が有効だからといって、すべての打ち合わせを対面に戻す必要はありません。パーティーハード株式会社では、プロジェクトの進行段階に応じて明確な使い分けの基準を設けています。

プロジェクト初期のキックオフ、業務要件の棚卸し、あるいは方針の大きな転換が必要になった局面では、原則として対面の打ち合わせを提案します。発注担当者と開発者が机を並べ、紙やホワイトボードを用いて全体像を掴む工程に集中するためです。この段階で一度顔を合わせて相手の関心や人柄を把握しておくと、その後の開発期間におけるSlackやGitHubでのテキスト連絡、オンライン定例会でのやり取りも円滑になります。相手の判断基準や文脈が共有されているため、短い文面でも意図の食い違いが起きにくくなるからです。

一方で、要件が定義されて実際の開発スプリントに入った後は、オンラインを中心とした運用へ移行します。Next.jsやVueで構築したプレビュー環境のURLを画面共有しながら、実際の動作をもとに改善点を議論する作業は、オンラインのほうが素早く進みます。進捗報告や細かな仕様確認もオンラインで完結させることで、クライアント側の移動負担も削減できます。

ただし、クライアント企業の所在地が遠方である場合や、感染症対策、社内規定によって対面が難しい状況では、対面を無理に求めません。オンラインホワイトボードツールを活用しながら対面に近い議論の場を整えるなど、状況に応じた柔軟な運用を取っています。このように、目的である「共通認識の確立」を最優先に据えたうえで、状況に応じた最適な接点を設計しています。

開発フェーズに合わせた対話手段の選択

受託開発における対話手段の選択は、オンラインか対面かという形式の優劣ではありません。課題の輪郭を捉える探索期には同じ空間で非言語情報も含めて合意を形成し、要件が定まった実装期には画面共有やプレビュー環境を用いて検証速度を最大化する設計が、開発の手戻りを防ぎます。パーティーハード株式会社では、何を作るべきか確定していない構想段階からのご相談でも、対面でのブレストとオンラインでの迅速な開発を組み合わせて対応しています。

望月 涼太 / polidog

望月 涼太 / polidog

Co-Founder / Web Engineer